しっぽをくるん

ぺらねこのにっき

シン・ゴジラの感想です

前のブログからサルベージできなかったので、現時点でのシン・ゴジラの感想をまとめておきます。

当然、シン・エヴァンゲリオンには触れません。安心ですね。

シン・エヴァンゲリオンについての所感については今月16日0時ごろから語っていこうかと思っています。

 

さて、シン・ゴジラですが、アマゾンプライムビデオでなんかずっと無料で見れるので、いつでも見る事ができるとさえ言えます。

未見であれば、ぜひご覧になってみてください。

 

シン・ゴジラですが、庵野という男がどういう人間なのか、ということを知っておくととんでもなく分かりやすくなります。

 

このとき、手引となる作品はふたつです。

監督不行届 (Feelコミックス) | モヨコ, 安野 |本 | 通販 | Amazon

一般的には適応障害であるとか、発達障害として生き辛い生活を送りながら、カントクとして仕事を進めていく姿が伺えます。

正直、どれだけ人間社会に適合できていないかを切々と訴えてくるので、モヨちゃんのヤバさも相まってとてもやばい作品です。

 

そして、もうひとつはこちら。

https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP10QBE/

夢と狂気の王国です。

 

これは前世紀の体育会系ものづくり論で突き進むスタジオジブリの狂気について深く取材をしたドキュメンタリー映画なのですが、作中、風立ちぬ製作中に主役の声優がどうしても決まらなくて困った宮崎駿鈴木敏夫が、庵野秀明に声をかけるシーンがあります。

 

大先輩に声をかけられた庵野秀明は、即座に首を縦に振るんですね。
それによってカラーのしごとがめっちゃ止まるのは確かなんですが、悩まない。即断をするのです。
これは、庵野秀明が「斜めに首をふらない」漢であることを示したエピソードであり、庵野秀明の大人さ、社会性を示すシーンです。

※このときの庵野秀明は震災後に陥った強烈なスランプの中でもがいていたのだという話も先輩のアニメライターさんに聞きました。

このとき、宮崎駿庵野秀明を立て直したのではないか、という見方もできますが、夢と狂気の王国の中では、庵野秀明の本心には触れないので、わからないというのが現実です。

 

さて、この2作品を踏まえて上でシン・ゴジラを見ると、この作品がゴジラという難題に立ち向かう庵野秀明自身と、生きづらさを抱えたはみ出しもののチームであるという構図が理解しやすくなります。

 

庵野秀明矢口蘭堂、このふたりとも才能に恵まれた人間ですが、このふたりがプロの仕事。受けた以上は相手が納得するかそれを超えるクォリティのものを出す。ということを見せつけてくれるわけです。
 

その成果を後押しするのは、生きづらさを抱え、コミュニケーション弱者でもある、この映画の聴衆です。
矢口蘭堂は、庵野秀明の理想の自分なのかもしれませんが、コミュニケーション弱者と、コミュニケーション強者の間を翻訳してつなぐ優秀な通訳として、チームを機能させ、責任を取り、ゴジラを倒してのけます。

  

そこに、この作品のカタルシスがあるのです。

 

私はシン・ゴジラのテーマを、生きづらさを抱えた人たちに能動的に生きるか、受動的に死ぬかの決断を迫るとともに、頑張れば報われるよと背中を押してくれる作品となっていると感じました。

 

この部分を今風に言うと「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」になるのかもしれませんね。

(2021年3月14日追記)元の文章では、発達に偏りがあったり、苦手なことがたくさんあっても、いいチームを組めれば全力で得意なこと、やりやすい仕事に集中できて、強い戦力になり、社会に居場所が生まれ、生きやすくなると。といったニュアンスで書いていた気がします。しかし、これを庵野秀明に言われてしまうと、プレッシャーのほうが強くなってしまうと感じるのは私だけでしょうか。

 

現代日本、いろいろな問題が山積しており、誰でもがメンタルの不調を抱える時代かとおもいます。
その中で、チーム戦の尊さと、リーダーの資質を本当に上手に物語にしていると感じました。

 

本当に弱っているときに見ると、ざっけんなよとなるかもしれませんが、この映画から勇気を貰える方や、戦う活力をもらえる方がたくさんいるのだとおもいます。
なぜなら、私も力をもらったからです。

 

そういう意味で、シン・ゴジラは本当の傑作です。

そして、たぶん古びることはないでしょう。

初代1954ゴジラが古びないように。
 

シン・ゴジラを見た後は、初代ゴジラを見てください。
その鮮烈さに目を惹かれるはずです。
ゴジラがマスターピースであり、シン・ゴジラがまたマスターピースであることが理解できると思います。

https://www.amazon.co.jp/dp/B07PV2SHBG/