しっぽをくるん

ぺらねこのにっき

月に住む

私たちは月の坑道に住んでいる。月は軽すぎてめぼしい資源はない。そのかわり、軌道エレベータには近い。大きな貨物船は、月に資材を置いて、次の旅に出ることが多い。

地球向け荷物の積替え港。それが月に乞われた役割であり、そのために整備されてきた。

私たちが住んでいるのは、月の内側に掘られた採掘用の坑道ではない。これらのトンネルもメッシュ状に広がっているが、我々の住む幹線は月の赤道に平行に作られている。

この大きなトンネルには、1000人ほどが暮らすコロニーがいくつか走行しているのだ。月の中を高速で走り続けることで、この乗り物はほぼ1Gの擬似重力を生む。

私たちは月の真ん中に頭を向けて、この巨大な乗り物の中で生まれ育ってきた。

地表に設置された太陽光電化パネルによる安定した発電により、コロニーのなかでは、酸素や水もほとんど自由につかえる。

私たちの親世代は、ここで初めての子をなし、私たちはその次の世代を担うことが期待されている。おそらく、月から地球に降りない最初の世代になるのだろう。なぜなら、地球には魂の置き場がないから。

私たちの魂の置き場は、このコロニーなのだ。